【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
いらっしゃいませーっ!と、元気な声が店内に響いた。

店員さんに案内された席は、海が見える窓際。太陽に照らされた水面がキラキラしていて、少し眩しい。でも、とても綺麗で清々しい気分になる。

「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます!本日のメニューは、『金目鯛のアクアパッツァ』と『サーモンの香草焼き』になっております。いかが致しますか?」

うぉうっ!どっちも美味しそうじゃない!うーん。どうしよう……。

なかなか決められない私を見て、雪ちゃんが「一つずつ頂けます?」と両方を注文してくれた。

「かしこまりました。只今お作りいたします」

ペコッとお辞儀をして店員さんが離れる。

「すみません。私、いつもなかなか決められなくて……」

「構わないわよ。シェアして食べましょ」

「はいっ」

嬉しいな、嬉しいな。

お水を一口飲んで雪ちゃんを見る。煌く水面を、眩し気に目を細めて見ていた。

「……綺麗ですね」

「ええ……」

それだけ言って、また二人で海を眺めた。お客さんの声やBGMが、心地好く頭の中に響き渡る。波に身を任せ、ゆらゆら揺れている様な感覚。

しばらくボーッとその感覚に浸っていると、

「あれから……」

「はい?」

「あれから、笹木は会社を休んでいるみたいよ」

と言う雪ちゃんの言葉で、現実に引き戻された。

「そう、なんですか……」

「まあ、無理もないわね。皆がいる前であんな騒ぎ起こして、平気な顔で出社は出来ないわよ」

確かに、そうかもしれない。私だって、次の日の朝はどんだけ憂鬱だったか。
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