【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有

黙々と食べていると、突然雪ちゃんが、

｢江奈はいいお嫁さんになるわね～｣

と言った。

突拍子もない話に、グッと喉が詰まる。私はお水をゴクゴクと飲み、詰まった物を無理矢理胃に流し込んだ。

｢……なんですか、急に！？｣

｢だって、美人で料理上手。放っておく男はいないわよ｣

感慨深げに、うんうんと頷いている。

｢だから！美人なんかじゃありませんから！｣

全く。何回言うんだこの人は！

｢どうでもいい事言っていないで。食べ終わったなら片付けますよ。時間ないし｣

時刻は８時50分。片付けて、歯を磨いて、メイクをして。結構ギリギリの時間だ。それは雪ちゃんも同じのはず。

｢いっけない！メイクの時間がなくなるわ！｣

残りを掻き込み、急いで食器を片付ける。

｢10時よっ！それと、美味しかったわ、ごちそうさま！｣

そう言って、雪ちゃんは慌ただしく部屋に戻って行った。

｢ふぅ……｣

なんだか、久々に賑やかな朝。一人暮らしを始めてからは、誰かと一緒に朝ゴハンなんて食べた事がなかった。自分が作った物に、誰かが反応を示してくれた事が何より嬉しい。

｢さっ、私も着替えよっと♪｣

少しだけ浮かれた足取りで、リビングを後にした。