【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
部屋に戻り、ベッドに横になる。

「あ、お風呂……いいや。明日の朝入ろう……」

なんだか起きるのが面倒になって、頭まで布団を被った。

コチ…コチ…コチ…と秒針が時間を刻む。その音が妙に耳に付いて寝られない。いや、正確にはそれが原因じゃなかった。さっき起こった大事件のせいで、全く寝られない。

そっと唇を指でなぞる――。

雪ちゃんと、キスをしてしまった。

男の人とは思えない位柔らかった雪ちゃんの唇。感触がまだ、残っている。雪ちゃんは男の人が好きで、もちろん恋愛対象も男の人。なのに、なんで女の私にあんな事が出来たのか。思い出して、またドキドキして来た。

「……もう忘れて寝よう!おやすみ!」

こんなにドキドキしていては、心臓に負担が掛かってどうしようもない。再度布団を被って無理矢理目を瞑る。

でも、私の頭と心臓は一向に寝る気配を見せず、気が付いた頃には朝日がカーテンの隙間からさんさんと降り注いでいた。
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