初恋を君に

「ごめん。おまたせ。」

「こっちこそ…ってどうした?なんか顔色悪くない?」

覗き込みながら心配そうな顔で
達哉はこちらを見ていた。
どうやらこれは隠しようがないようだ…

「…うん。ちょっとお腹痛くて…」

「…それは胃薬必要な感じ?」

「うーん。違う…でもご飯は食べれるから。
泊まるのはちょっと無理かな…」

達哉はギアをドライブに入れると、
車を出発させた。

「…そっか。とりあえず、俺の家行こう。」

「…えっ?ちょっと聞いてた?」

「うん。」

待って…なんでそんなに無関心かな…
これから付き合っていく、況してや一緒に暮らしていく話がでているというのに…

いつも以上にイライラしてしまうのは
体調のせいだとはわかっているが、
それにしてもだ…
車の窓には不機嫌そうな自分が映っていた。

断ればよかった…
そんな考えが頭をもたげた時、
車が停まった。
まだ達哉の家に着くには早すぎると思い、
ハッとして顔を上げるとそこはドラックストアだった。

「何か買い物?」

「買い物あるのは文だろ。ほら行くぞ。」

「…えっ?ちょっと!」

車を降りて歩き始めようとしている達哉を
小走りで追いかける。

「…待ってよ。買い物なんてないよ?」

「…でも必要だろう?」

そう言って向かった先はサニタリー用品が並ぶ棚だった。

「ほら。俺の家に置いとく用に買っておきなよ。一応うちにも姉貴が置いていたやつあるけど…好みとかあるだろう?」

「…は??」

あまりの意外な行動に頭がついていかない。

家に?

置いておく?

達哉の家に??

「どれにする?」

「えっえっと…じゃあ…」

待って待って…
なんで私、付き合い始めたばかりの彼氏の前でサニタリー用品、選んでるの?

って言うか…
なんでこの人、普通なの??

混乱した頭で言われるがまま選び、
なぜか常用している痛み止めとともに、
お会計を済ませて車に戻ってきた。

「買い忘れたものない?」

「…うん。」

達哉は満足そうな笑みを浮かべ、
車を発進させた。
私は…と言うとイライラした気持ちなど
すっかり忘れて達哉の行動に
混乱したままだった。
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