初恋を君に
「シャンパンあるけど…どうする?」
「じゃあ、一杯だけ。」
「OK!そっちじゃ狭いから注いで持ってく。
座ってて。」
しかし…こんな料理上手なんて、
知らなかった。
リストランテなんて言ってたから、
イタリア料理なんだろうけど…
「はい。お待たせ。乾杯しよう。」
「えっと…はい。乾杯…」
「乾杯。メリークリスマス。」
カチリと小さくグラスを鳴らすと、
達哉はにっこり微笑んだ。
…やっぱりまだ変な感じ。
ついこの間までは同僚だったのに、
まさか恋人になるなんて…
「冷めないうちに食べようぜ。」
「うっ…うん!美味しそう。いただきます。」
フォークを手に取り、いざ一口食べようとした時に達哉が可笑しそうに笑う声が聞こえた。
「…何よ?」
「別に。まだなんか慣れないなぁとか思ってるんだろうなと思ってさぁ。」
…図星だ。
なんでわかっちゃうかな…
返事はせずに一口食べる。
「おっ美味しい…!」
「当たり前だ。本場直伝だからな。お袋がばあちゃんから教わったレシピだから美味いに決まってる。」
「本場?イタリアってこと?」
「そう。俺の父方のばあちゃんがイタリア人って言わなかったっけ?」
「…はっ?…知らないよ。」
じゃあ達哉はクォーターってこと?
言われると納得してしまう。
そういえば前にご両親の話が出た時に、
スキンシップが多めが普通みたいなことを
言っていたことを思い出した。
「まぁまぁ…今は温かいものは温かいうちに!」
「…うん!確かにそうだね。」
暖かい部屋に大好きな人と美味しい料理。
これが続いていくのなら、
それは凄く楽しい日々になる。
「うぅーお腹いっぱい…苦しい…」
「お互い、たくさん食べたなぁ。コーヒーにする?ヴァンショー温めようか?」
「じゃあ…ヴァンショーにしようかな。」
「了解。」
立ち上がってキッチンに向かう達哉を、
空になったお皿を重ねて持つとその背中を追いかけた。
「お皿は私が洗うよ。」
「別に良いよ。明日やろ?鍋とかもあるし、明日一緒に一気に2人でやろうよー。」
「えー?でもご飯も作ってもらったし…」
スポンジに手を伸ばすと、
取り上げられてしまった。
「いいの。明日!!早く2人でゆっくりしたい!」
「何それー?」
「ほら、ひとつカップ持って!ソファに行く!」
そう言うと達哉はソファに向かい座ると隣をポンポンと叩いた。
どうやら、早く座るようにと言うことらしい。