初恋を君に
「ねぇ…そんなにくっつかなくてもいいんじゃない?」
「なんで?」
すぐ隣にぴったりと座る達哉は心底不思議そうな目をしてこちらを見るので、
まるで私が間違っていることを言っている気持ちになってしまう。
「…まぁいいや。これ飲んだら、帰ろうかな。何にも準備してきてないし…」
「はぁ?寝間着なんか貸すし明日は俺のスエットとか着てればいいじゃん。」
「いや…ほら、下着ないから…」
「なんだ。そんなことかぁ〜」
いやいや…そんなことって…
女子的にはかなり大問題。
「じゃあ、買いに行こう?」
「…はっ?」
「飲んでるから車は出せないけど、この時間ならまだ近くのショッピングセンターやってるから。選んでもいいし。」
えっ?ちょっと待ってよ…
選ぶって…
「いいよ!一回帰って、また明日のお昼にでも来てもいいし…」
「ヤダね。」
「ヤダって…子供じゃないんだから…」
達哉はカップをローテーブルに置くと、
両手で私の肩を抱き寄せた。
寄りかかるような体勢になりながら、
カップの中で揺れるヴァンショーを見ていた。
「せっかく一緒に居られるのに…帰るとか言うなよ…寂しいじゃん…」
「…寂しい?」
達哉は大きくため息をついて、
顔を私の首元に埋めた。
「寂しい、ずっと一緒にいたい…まさかそんな事を言う日が来るとは思わなかった…もっとドライな人間だったはずなのに。文は特別だって思ってたけど、自分の中でここまでとは考えてもみなかった…」
「…そうなの?」
肩を抱いた両腕に少しだけ、
力がはいったのを感じた。
「…呆れた?」
「…呆れてない。…でも驚いた。」
「あはは。よかった。」
そう言って離れると立ち上がり私のコートに手を伸ばした。
「遅くならないうちに行ってこよう。」
「…買いに行くのは、決定事項なのね?」
カップを置き渋々立ち上がる。
「そうゆうこと。」
「はいはい…」
コートを受け取り、達哉に続いて玄関をでる。12月の夜は冷え込んでいた。