初恋を君に
ショッピングセンターに向かいながら、
思い出したように、宣言をした。
「下着は自分で選びます!」
「じゃあ一緒に選ぶのは?」
「ダメ。お店に男の人がいたら、他のお客さんが嫌がるじゃない。一人でゆっくり選びたい人の迷惑になるでしょ!」
まぁ…一人でゆっくり選びたい人とは、
自分のことなのだけど…
「うーん。確かにそうだな〜。今回は諦めるよ。」
「今回も何も…次回もありません!」
夜道を仲良く手を繋いで歩いているというのになんでこんな話…
色気があるのか、ないのか…
「それにしても寒いなぁ…家に帰ったら風呂入ろう。でも今日は一緒は無理だよなぁ…」
「いやいや…今日じゃなくても基本無理だから。そもそも、なんでそんなに一緒に入りたがるの?」
「えー?普通じゃないの?恋人同士とか夫婦とかは…」
今までお付き合いした人とお風呂に一緒とかはなかったなぁ…
ふと、そんな事を考えていると、
隣の達哉が急に立ち止まった。
「えっ?どうしたの?」
「…なんでもない。そこ曲がったらお店。
俺はフードコートでお茶飲んでるから。」
「うっうん。」
突然立ち止まったかと思うと、
今度は速足で歩き始めた。
手は繋いだままなので若干引っ張られるように着いて行く。
一体、どうしたというのだろう?
「あそこで待ってる。」
「…はい。」
フードコートを指差して、そのままスタスタと歩き始めた達哉を見送って仕方なしに、
エスカレーターに乗る。
そういえば、あんなに感情が出るタイプだったっけ?
なんだかいつも飄々としているタイプのような気がしたけど…
そんな事を考えながら、
目に付いたものを買い来た道を戻ると
エスカレーターの下にフードコードにいるはずの達哉を見つけた。
「ごめん。待ちくたびれたよね。」
「…いや、そうゆう訳じゃないんだけど…買えた?」
「まぁ…とりあえず。」
「じゃあ帰ろう。」
そう言うとまた何気なく私の手を握り歩き出した。
急に不機嫌になった訳がわからないけれど
なんだか達哉からは不機嫌なオーラが
立ち込めている。
「ねぇ?やっぱり帰るよ。私…」
「えっ‼︎何?なんで?」
「だって、なんか迷惑そうだし。なんか悪いかなってやっぱり思って。」
「迷惑なんて…なんで急に…」
達哉は立ち止まるとこちらを見た。
その表情に先ほどの不機嫌オーラは一切なく
かわりになんだか捨てられた仔犬のような顔をしていた。こんなに大きいのに仔犬に見えるのはなんだかおかしいけれど、
急に弱々しく表情に変化していた。