初恋を君に
次の朝、身体が重くて目が覚めた。
体調が悪いとかではなく、何かが覆いかぶさっているような物理的な重さだ。
目を開くと達哉の左手が目の前にあって、どうやら達哉に後ろからハグされたような体勢らしい。
この人は本当にくっついているのが好きな人だ。
まぁ…私も嫌じゃないけれど…
目の前にある達哉の左手の薬指に指輪がはまっている気づいたのは、少し経ってからだった。
「あれ?こんなのしてたっけ?」
よく見ようと自分の手を伸ばし、達哉の指に触れようとした時
自分の左手薬指にも、同じような指輪がある事に気づいて驚いた。
「…え?」
腕を伸ばして窓の隙間から差し込む光に手をかざしてみる。
光にあたり指輪はキラキラと輝いていた。
伸ばした左手にそっと達哉の腕が伸びてきた。
「おはよう。…ごめん。起こした?」
「…いや、大丈夫。」
「これ…」
「サイズもぴったりだな。」
「あ…うん。」
ってそうじゃなく、この指輪の意味というか…
そうゆう事を知りたいんだけど!!!
とは勿論言えずにいると、達哉の方が気まずそうに切り出した。
「本当は婚約指輪を用意するつもりだったんだけど…色々と焦りすぎかなっていうのと…
気軽に長く着けてもらいたいたかったから…ペアリングにしたんだけど…ダメかなぁ?」
「…ダメじゃないけど。」
「良くもない?」
「ち…違うよ。嬉しい…」
声がうまく出せないのは、涙が溢れてしまうからだった。
私は、なんで泣いているんだろう?
ただ幸福感に満たされている。
何故だかそう実感していた。
「泣くなよ…」
「…泣いてない。」
「嘘つけ。」
「自分だって…昨日…」
伸ばした腕を絡め取ってそのまま達哉に後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「…でも達哉が泣いた理由今ならなんとなくわかる。」
きっかけははっきりしないけど、
多分、達哉も今の私と同じような気持ちになったのかもしれない。
「ねぇ?文?」
「…何?」
「結婚しよ?」
…えっ?
「ずっと一緒にいたい。だから…結婚してください。」
「…わたしでいいの?」
一度止まりかけた涙がまたあふれはじめる。
「文じゃなきゃヤダ。ダメ?」
「…ダメって」
「じゃあ、良くない?」
達哉は少し可笑しそうにさっきのように聞いてきた。
私は、もう答えることが出来ずただ首を横に振る事しか出来なかった。
「もう泣くなよ〜。いつからそんなに泣き虫になったんだよ。…ほら、こっち向いて。」
言われるがまま、身体を向き直すと達哉の目も潤んでいた。
「…人のこと言えないじゃない。」
「…確かに。」
達哉の潤んだ瞳を見つめ、一息着いてから話し始めた。
「ねぇ?私とずっと一緒にいてくれる?私は達哉と一緒に歳を重ねていきたい。おじいちゃんとおばあちゃんになっても手を繋いで歩いてね。約束よ?」
そう言うと達哉は潤んだ瞳をもっと潤ませニッコリと笑った。
「勿論。約束。」
私達は、まだ始まったばかり。
泣いて笑って…沢山のことを2人で乗り越えていきたい。
達哉の胸に顔を押し付けると、
くすぐったそうに笑った。
「これからもよろしくね。」
「こちらこそ、ずっとよろしくな。」
ーend…?