初恋を君に
それぞれがそれぞれの道を、
歩き出していた。
出逢いがあれば、別れもある。
ずっと同じなんてありえないのだ。
わかっていてもその時に立ち会うと、寂しいものだ。
「変わらないのは、難しいけど…またこうやって3人でご飯にいきましょう?」
「…そうだね。」
「はい。多分、2ヶ月に一回はなんだかんだと本社の東京に来ると思うので!」
「その時はちゃーんと、予定空けるのよ!」
「わかりました!」
たくさん食べて、沢山飲んで、たくさん話をした女子会の時間はあっという間に過ぎていった。
珍しく酔っ払ったさやかを一人で帰すわけにもいかず、丈に迎えに来てもらうことにした。
「さやかさん、珍しいですね?」
くみちゃんは嬉しそうに、私に寄りかかるさやかを見ていた。
「そうね…まぁ嬉しいことと驚いたことと…色々あったからじゃないかな。」
「…そうですか。」
「くみちゃん、染谷部長には異動のこと話したの?」
「いえ…本当はまだ他の人に話しちゃいけないんです。辞令の発表があるまで秘密にしておいてくださいね!さやかさんにも秘密のこと言わなきゃ。」
「くみちゃんはそれでいいんだよね?」
「はい。今は一旦離れて、色々と考えてみます。そうゆう良いチャンスかなって。それに一人暮らしもしてみたかったし…沢山、経験してきます。」
「…なんかくみちゃん、すっかり大人だね。」
「何言ってるんですか!?私はずっと大人です!」
2人で笑っていると、スマホが鳴った。
相手は丈からだった。
「もしもし?着いた?ごめんね。今出るから…」
『大丈夫そう?いいよ。お店の中、行くから。』
「助かる!よろしく。とりあえずさやか起こしとく。」
電話の内容を聞いて、くみちゃんはさやかに声をかけてくれた。目は覚ましたようだが…まだ半分寝ている。なんとかコートを着させて外に出れる状態になったところに旦那様が来てくれたが…
「…あれ?たっ…上条と…染谷部長?」
「一緒にメシ食ってたところに、連絡来たんだ。」
「あっ…そうなんだ。」
「さやか?大丈夫?帰るよ。」
そう言ってさやかの手を引いて丈は歩き始めた。
お店を出るとタクシーが待っていた。
「俺らこのままタクシーで帰るわ。悪い。」
「いいよ!さやかもそんな感じだし…じゃあね」
タクシーを見送り、残されたのは4人。
っていうか…上条はわかるけど、
なんで染谷部長も???
「くみちゃん?ここから一本だよね?時間平気?」
「はっはい!…調べたらすぐ電車来そうなので!私、これで失礼します!!お疲れ様でした!!」
お辞儀をして、くみちゃんは小走りで駅の方向に走っていった。