初恋を君に
「もういいって。で二日酔いとかは?」
「ちょっと頭痛いけど…割と平気かな」
そうなのだ。私はかなりお酒が強い。
しかし昨日は寝不足も相まって潰れてしまった。
「さすが、ザルだね~文は。でも昨日みたいに潰れるまで飲むなんて珍しいなぁ~」
「あははーアラサーだしね~。もう年かなぁ~」
なんて誤魔化してみたものの…
上条は何故か真剣だけど優しさがある眼差しで私を見ていた。
「文。なんかあったんだろ?」
やめてほしい。
昔から何かあるとすぐに気づく。
気づいて優しく慰めてくれたり、話を聞いてくれたり…
入社当時から変わらない。
そんな上条が好き時期もあった。
でももう過去の話だ。
今は仲良しな同期の1人。
「文?」
「あ〜。何も無いよ。結婚の報告に浮かれてたし、疲れてたのかな??」
今、上条の優しさに触れると泣いてしまいそうだったので本当の事は言えない。
次の同期会では言えるようにしておこう。
そんな私を知ってか知らずか、
上条の大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「まっそう言うことにしといてやるよ。」
「ふっ何それ?」
詮索されなかった事に安心して笑うと
「やっと本当に笑ったなっ」
と上条も優しい笑顔になった。
よく見る笑顔のはずなのに、
なぜかこの時はドキドキしてしまった。