初恋を君に
「さて、帰る準備しようかな!!」

ドキドキした気持ちを振り払うように、思いっきり立ち上がった。
…が
あれ?
そう言えばスカートとジャケットは?
って言うか…どうやって着替えたの私?

立ち上がったと思ったら固まった私を見て上条は笑いながらハンガーにかかっているスカートとジャケットを持って来てくれた。

「これだろ。安心しろ。俺が脱がせてやったから。」

「…っ」

声にならぬ声をあげ目を見開いて上条を見た。

たまらずと言った具合に彼は吹き出した。

「くっくっ落ち着けって、ちゃんと下は自分で着替えてた。ジャケット脱いで寝ちゃったから上は俺が着せたけど。」

「…やめてよ。本当に!昨日の事、覚えてないんだから。でもありがとう。」

「お前本当に覚えてないの?昨日の事?」

ちょっと何なに?どう言うこと?

「えっ…私…何かした??」

恐る恐る聞くと、上条はふーんと言う顔をしながら

「別に。なーんにも。靴脱がせようとしたら玄関で寝ちゃって起こすのかなり大変だったぐらい。」

「いや。マジでありがとう。本当にごめん。」

「まぁいいから。帰るんだろ。早く着替えろよ。あっシャワー浴びる?」

「いやいやいやいや!何にも準備ないし…いいよ。家に帰ってからゆっくり入るし」

これ以上迷惑もかけられないし、何より家に帰って元カレのモノなどを早く処分したかった。

「とりあえず。これだけでも使えば?」

とポーンと投げてきたものを受け取ってみるとコンビニで売っているお泊まりセットだ。1回分のメイク落としや化粧水などがセットになっている。

いつ女の子がきてもいいように家に常備してあるのかしら?
…流石です。

「いや…大丈夫」

「使っとけよ。文は肌が綺麗だから。気休めかもしれないけど少しでも早く落としとけ。」

なにそれ…照れくさい。

「うっ…わかった。ありがとう。洗面台貸して。」

「そこの二つめのドア。ちなみに手前はトイレね。」


いそいそと私はお泊まりセットとジャケットとスカートを持って洗面台に向かった。
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