初恋を君に
有り難くお泊まりセットを使い、
服を着替えて、ふと気づいた。
スッピン…
上条と言えども男性の前で!
アラサー女が!?
思わず洗面台に手をついて項垂れたが、
メイクをしたくても鞄はリビングだ。
仕方ない。
諦めてリビングへ向う。
上条はソファに座ってテレビを見ていた。
「洗面台ありがとう。私帰るね。」
「送ってやるよー。駅までも分からないだろうし…」
上条はテレビを消して立ち上がり振り返った。
私を見て動きをとめた。
マジマジと私の顔を見ている。
「…いつもと顔が違うんでしょ。そんなに見ないで。」
「…いや。行くぞ。」
ポーンと私の頭を叩いて玄関に向う上条。私も慌てて玄関に向かう。
「道教えてもらえれば自分で帰るよ!!」
「いいからっ」
仕方なく靴を履き玄関をでた。
外に出ると晴天だった。
太陽が眩しい。
季節は秋。10月初めはまだコートはいらない。日差しも暖かだ。
「文。早くこいよ。エレベーター来たぞ。」
「はいはい。」