初恋を君に

昨夜は正体不明だった為、分からなかったが上条が住んでいるマンションはなかなか立派だ。

エレベーターで1階まで降りてエントランスから出ようとする私を止めてもう一つの横扉に促した。

そこは駐車場だった。
すぐ近くで車のドアのキーロックがガチャリと解除された。

どうやら駐車場を出てすぐのこの車が上条のものらしい。

「助手席どうぞ。」

と言って上条は運転席に乗り込んだ。

「…ではお言葉に甘えて。」

私が乗り込むとナビを操作しながら
「文の家って駅から近い??」
と聞いてきた。

「えっ?最寄りの駅でいいよ。」

「スッピンで電車乗る??」

「うっ…確かに。」

さすがに土曜のお昼…
誰が見ている訳でもないがやはり気になる。

「…それに」

上条が小さく呟く。

「えっ?なに??」

「いや。それで。いつも使ってる駅の近くでいい?」

何を言いかけたんだろ?
とりあえず家から割と近いの病院を指定した。

駅としては3駅違うが車だと20分くらいの距離だった。

目印にした病院から少し車を進め。マンションから近くのコンビニに車を止めてもらう。

「ありがとう。もうすぐそこだし、買い物もしたいからここでいいよ。」

「いーよ。今日は暇だし早く買い物して来いよ。家まで送るよ。」

「いや。でも…」

「早くしろっ」
笑いながら上条が頭に手を乗せてくる。
何だかこれ以上、言っても無駄な気がして渋々従うことにした。

買い物を済ませ車に乗り込み、道を伝えながらマンションの前まで車を進めていく。

「そこの煉瓦の壁の所がうち。」

「へぇー可愛いマンションだな。」

「ありがと。送ってくれて。」

そう言いながら、さっきコンビニで買った飲み物とクッキーを取り出す。

「ささやかながらお礼です。今度改めてきちんとお礼するから!」

「お礼ね…」

「何なの。今度じゃ不満なの?」

「いーや。貰えるんなら貰っとく。楽しみにしてる。」

なんか変なの。
「じゃあ。ありがとう。」

そう言って助手席のドアを開けようとした。

「文っ!」

「えっ何??」

「…あ〜。明日何すんの?」
割と大きな声で呼び止めるから何事かと思ったらそんな事?

「明日は…模様替えしようかなって…」

そうだ。気持ちを切り替えるためにも、いいかもしれない。

「ふーん。」

「うん。じゃあね。」

今度は呼び止められずに車を降りた。
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