瞬間、恋をした
「これを綴じたのは、中谷くんね?」
「え?」
「3分の2を彼女にやらせた上に、こんなに適当にやるなんて……」
そう言いながら、俺が綴じたものと高梨さんが綴じたものを見比べた。
まあ、そりゃあ不揃いのほうを俺がやったって思うよなあ、ふつう。
「やり直してくれるかしら? この不揃いのだけでいいから」
俺のことだけを見て、おばちゃん先生はそう言ってきた。
しかたなく、「わかりました」と答えてそのプリントを受け取った。
まあ、直すだけだしすぐ終わるか。
それに、どうせいまから部活行ったって、意味ねえし……。
「高梨さん、手伝ってくれてありがとうね」
おばちゃん先生は、高梨さんには優しくそう言った。
そんなふたりを見て、俺は呆れてため息を吐いてから、先に職員室を出てまたとなりの応接室へと入った。