瞬間、恋をした
――すべて綴じるのが終わったのは、それから30分くらい経ったころだった。
一度綴じたホッチキスを外すのに、思っていたより時間がかかった。
大きく伸びをしてから立ち上がり、荷物とプリントを持って応接室を出て、本日3度目である職員室に、また入った。
職員室の中にあった大きな時計を見て、いまが6時30分だということがわかった。
「田井中先生、やり直しました」
「あら、きれいにできるじゃない! 今度また授業中に寝てたりしたら、また頼むからね」
「……わかりました」
今度は軽く怒りながら、そう言葉を返した。
だから、なんで俺だけなんだよ。
おばちゃん先生も意外と性格悪いな。
そう思いながら職員室を出て、昇降口へと向かう。
薄暗い校舎は、少しだけ薄気味悪い。
高梨さんのこと先に帰して正解だった。
……あ、でも俺、高梨さんがせっかくなにか言おうとしたのをさえぎっちゃったな。