瞬間、恋をした
「わたしと話してたら、中谷くんはきらわれちゃうよ」
そう言った高梨さんの顔は冷たいもので、つい、華奢な腕を掴んでいた手を離した。
すると高梨さんは、なにも言わずにこの場から立ち去っていった。
……高梨さんがきらわれる理由が、わかんねえよ。
高梨さんと話して俺がきらわれたとしても、そんなのはどうってことない。
それよりも、なにやってんだろうな〜、俺。
急に距離を縮めようとしたら、そりゃあ引かれるし冷たくされるんだろうな。
いくら校内で何度も見かけたことがあったとしても、話したのは先週のあの日が初めてだ。
まだ"知り合い"程度。
いや、向こうはそんなふうにすら思ってないかもしんないのに。
――高梨さんの笑顔を見た瞬間、胸の奥が小さく高鳴った。
恋って、こんな簡単に始まるものだっけ。
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