瞬間、恋をした
「でもまあ、女の子はしつこいのをきらうと思うけど?」
「……だよなあ」
いつ話しかけても、彼女の整った顔は強張っていて、柔らかい表情を見せてくれることなんて、一度もないから。
ますますきらわれてそうだな、俺。
「っつーかさ、翼は、なんであの子が女子からきらわれてるのか知ってんの?」
翼は他のやつに比べて情報通だから、もしかしたら知ってるかと考えた。
すると予想どおり、翼は「まあね」と含み笑いを浮かべながら答えた。
「やっぱりな。 教えろよ」
「しかたねえなあ、教えてやるよ」
話しながらも、途中から日誌を書いていた翼だったけど、ゆっくりペンを机に置いた。
「ゆずちゃんが話さなくなったのは、去年の5月――」
なんでこいつがこんなにくわしく知ってんのかはわからないけど、俺は静かにうなずきながらその話を聞いた。