瞬間、恋をした
話さないわたしに呆れて、早くどこかへ行ってほしい。
「チッ。 ほんっとに腹立つ!」
いつもなら、そうなんだけど。
彼女は……ちがうらしい。
去年度で退学した、あの子に似てる。
気が強くて、キツいメイクをして。
「アイに謝れよ!」
わたしは、なにも知らない。
話しかけてきたのだって、中谷くんだ。
それなのに、彼女はとうとう堪忍袋の緒が切れたのか、右手を振り上げた。
――ああ、このまま殴られるんだ。
そう思ったときだった。
「おい! なにしてんだよ!」
昔、親友だったレイナから借りた少女漫画に出てきたヒーローみたいに。
ピンチのときに、現れた。
――でも、中谷くん、なんで来たの。