瞬間、恋をした
「アユも、高梨さんに惚れたの? だからそんなこと言うんだね!」
「……はあ?」
「見損なった! 最低!」
先頭にいたキツい彼女がそう吐き捨ててこの場から去ると、他の3人も彼女について行くようにして、どこかへ消えた。
すると中谷くんは、ゆっくりと後ろを振り向いた。
わたしはその距離が意外と近いことに気がついて、二歩、後ろに下がった。
「……平気?」
悲しそうな、そんな顔をした中谷くんの言葉に、小さくうなずいた。
彼はきっと、周りから好かれるタイプ。
そういえばよく、男の子や女の子から「アユ」と呼ばれる男の子のことは目にしていた。
「……ありがとう」
心でつぶやいたはずなのに、気がつけばそれを言葉に出していた。