瞬間、恋をした
でもまあ、たぶんそれが理由。
授業は寝るし提出物は期限までに出さないけど、俺のテストの成績は学年でいつも10番内に入るくらいだ。
それが腹立つんだろうな。
周りから見れば"勉強してないのに頭がいいやつ"だけど、俺だって勉強してないわけじゃない。
これでも予習復習は、ちゃんとやってるし。
「……あ、ゆずちゃんだ」
「え?」
ふと、窓の外を見て翼はその名前をつぶやいた。
俺も翼の視線の先を見ると、中庭をひとりで歩いている女の子を見つけた。
移動教室だったのか、教科書やらノートやらを抱えている。
だけど彼女は、周りの女の子たちとは群れずに、ひとりで歩いている。
俺らと同じ、今年の4月で高2になった、高梨(たかなし)ゆず。
1年のときもいまも、となりのクラス。