瞬間、恋をした
「は? 俺?」
「うん。ああいう子、好き?」
「……さあ」
「うっわ、ごまかした」
そんな話をしていたら、担任が教室に入ってきた。
チャイムは鳴ってないけど、帰りのホームルームが始まる合図だ。
だから翼は自分の席へともどった。
「席に着け、始めるぞー」
全員が席に着くと、先生は簡単な連絡事項を話し始めた。
俺は、ふと窓の外を見てみた。
高梨さんの姿は、もうそこにはなかった。
もちろん、他の生徒も。
……たしかにあの人は美人だけど、タイプってわけじゃねえなあ。
つうか好きな人も、顔では選ばないし。
どうせ高梨さんのことを好きっていうやつは、顔だけだろう。
女子にもきらわれて話さないようなやつのこと、本気で好きなやつはいないと思う。