瞬間、恋をした
なんてぼんやりと考えていたけれど、担任の「中谷!」と俺を呼ぶ野太い声が聞こえて、我に返った。
「……はい」
「このあとすぐに田井中(たいなか)先生のところに行くように」
田井中先生は、現国のおばちゃん先生。
てか、そんなこと言われなくたってわかってるし。
それに、おばちゃん先生、担任にまで言わなくたっていいだろ……。
そう思いながらも「はい」と小さな声で返事をした。
「じゃあ今日はこれで終わり。 号令〜」
「きりーつ」
なんていういつもどおりの号令で、声を合わせて「さよなら」とあいさつをし、1日が終わった。
荷物を、部活指定の大きな黒のリュックの中に片づけてから練習着に着替えようとしていると。
担任に「中谷!」とまた大きな声で呼ばれた。
かと思えば、担任は俺のもとへとやってきた。