瞬間、恋をした
「なんすか」
「着替える前に、先に田井中先生のところに行け」
「わかりました」
呆れ顔でそう言われ、出した練習もリュックの中へと戻した。
そしてそれを背負い、先生に「さようなら」と言ってこの場を去ろうとすると。
「問題起こすなよ」
という言葉を吐き捨てられた。
……問題っていう問題は起こしたことねえよ。
その言葉に返事をせずに、俺は足早に教室を出た。
そして職員室に向かう途中。
後ろからこっちに向かって走ってくるような足音が聞こえたと思ったら、肩をトントンと叩かれた。
振り返ると、そこには翼がいた。
翼はもう練習着に着替え終えている。
「がんばれよ、歩夢」
「はいはい」
「顧問には言っとくからさ」
「どーも」
おばちゃん先生の説教のあとは、所属しているサッカー部の顧問からの説教かな。
悪循環じゃねえか……。