瞬間、恋をした
「じゃあな」と言って、俺を置いて先にグラウンドに向かった翼。
俺もしかたなく急いで職員室へと向かう。
とっとと話を終わらせて、早く部活に行こう。
どうせ適当に返事をしておけば、すぐに帰してくれるだろう。
そう思い職員室へと入ると、すでに田井中先生のところには先約がいた。
黒髪のセミロングの女子だ。
少し離れたところでふたりの話が終わるのを待つ。
だけど、どうやら先生が一方的に話しているだけのようだ。
そんなとき、話していたおばちゃん先生が俺に気がついて、「こっちよ」と声をかけた。
すると先にいたその女子も、静かにこっちを振り返った。
……あ。
と、その姿を見て、思わず声に出そうとしてしまった。
――その女子は、高梨ゆずだった。
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