彼女のことは俺が守る【完全版】

「そうですか。雅さんに手間を掛けさせてしまいますね」


　雅さんは海斗さんの専属のスタイリスト。そんな雅さんに洋服を買いに行ったり、今日みたいにヘアメイクをお願いするのは申し訳ないような気にもなる。一緒に買い物に行った時から雅さんは優れたスタイリストであるのも分かるし、彼女の立ち振る舞いからも洗練されたものを感じる。


　でも、私までスタイリングして貰うのは…申し訳ない。俳優篠崎海の専属スタイリストは頼んでも本来ならば、こんな仕事を受けたりはしない。それなのにマンションに来てまで用意を手伝ってくれるのは雅さんの優しさだというのを私には分かる。


「気にしないでいいよ。雅さんも里桜に会いたがっていたし、俺がお願いすると即答してくれたから」


　雅さんが私に会いたいと思ってくれているだけでも嬉しい。そして、少しでも私の気持ちが軽くなるようにと海斗さんの気遣いも嬉しかった。


「私も雅さんに会えるのは嬉しいです」


　そんな話をしているとコーヒーが出来たので、海斗さんの愛用のマグカップに入れると、ソファの前にあるテーブルに置いた。


「どうぞ。今日は少しだけ濃く淹れました。口に合わなかったら淹れなおしますね」


　いつもより濃いコーヒーを望んだのは私だけで、海斗さんまで私と一緒である必要はない。もしも、海斗さんお口に合わないなら、淹れなおすつもりだった。


「ありがとう。大丈夫だ」