彼女は僕を「君」と呼ぶ
冷たい風を頬に浴びながら、マフラーで鼻の頭を隠す。駐輪場には幾つか自転車が残っており、校門を出てすぐの正面に作られた第二グラウンドからは声が聞こえた。
その声に応戦するようにライトが明々と照らされている。
自転車のスタンドを上げ、ネジの緩んだ籠が大きく跳ねた。
久野のあの言い方だとまるで、振られるのを想定していたみたいだ。
教室での一件を思い出す、そこは流石に維を見ていたというだけはあるのだろう。
ならば、久野の目から見て、これは恋という事で間違いないのか。それでも、告白してくれたあたり、曖昧なのかもしれない。
友人から一脱して恋人として、今直ぐではなくとも、彼女を諦めた時、恋人の席に座れるのかと、嬉しくないと言えばそれは間違いなく嘘だ。
久野は、はっきりと物を言う子ではあるが嫌味もなく、気が利いて、笑顔も可愛い。
記憶の片隅に散らばる久野の情報を集めて組み合わせる。彼女にするならば有りだ。
有りではあるが、やはり付き合う事は出来ない。
維が向ける好きと久野が向ける好きが違う。久野が向ける好きと、維が彼女に向ける好きは同じだが。
なんと伝えればいいのだろう。深く瞼を閉じたその片隅で、落ちていった踵が映った。
どうして落としたのか。少しでも期待していいのかと、自分の良いように考えしまう。ただの気まぐれか、少しでも寂しいと思ってくれたか。
もし、もしも、彼女が小野寺教諭を好きでなくとも彼女に目が行っただろうか…きっとそれはなかっただろう。
拳一つ分の空間に彼女の好きを感じて、堪らず悔しいのに、それなのに応援している。心も頭もおもちゃ箱をひっくり返したようにぐちゃぐちゃだ。
上げたスタンドを立て直し、駐輪場に背を向ける。
その声に応戦するようにライトが明々と照らされている。
自転車のスタンドを上げ、ネジの緩んだ籠が大きく跳ねた。
久野のあの言い方だとまるで、振られるのを想定していたみたいだ。
教室での一件を思い出す、そこは流石に維を見ていたというだけはあるのだろう。
ならば、久野の目から見て、これは恋という事で間違いないのか。それでも、告白してくれたあたり、曖昧なのかもしれない。
友人から一脱して恋人として、今直ぐではなくとも、彼女を諦めた時、恋人の席に座れるのかと、嬉しくないと言えばそれは間違いなく嘘だ。
久野は、はっきりと物を言う子ではあるが嫌味もなく、気が利いて、笑顔も可愛い。
記憶の片隅に散らばる久野の情報を集めて組み合わせる。彼女にするならば有りだ。
有りではあるが、やはり付き合う事は出来ない。
維が向ける好きと久野が向ける好きが違う。久野が向ける好きと、維が彼女に向ける好きは同じだが。
なんと伝えればいいのだろう。深く瞼を閉じたその片隅で、落ちていった踵が映った。
どうして落としたのか。少しでも期待していいのかと、自分の良いように考えしまう。ただの気まぐれか、少しでも寂しいと思ってくれたか。
もし、もしも、彼女が小野寺教諭を好きでなくとも彼女に目が行っただろうか…きっとそれはなかっただろう。
拳一つ分の空間に彼女の好きを感じて、堪らず悔しいのに、それなのに応援している。心も頭もおもちゃ箱をひっくり返したようにぐちゃぐちゃだ。
上げたスタンドを立て直し、駐輪場に背を向ける。