彼女は僕を「君」と呼ぶ
ひなたと影の距離
好きな色は紺色。

辛い物が駄目で甘いものが好き。

お兄ちゃんと呼ばれている。

此処の卒業生な生徒会長。

サッカーが上手い。

そして、素敵な婚約者がいる。


どんどん更新されていく小野寺教諭の情報にこそが、満島棗へと繋がる。そう思う様になった。

本日のスーツは青色に近い紺。誰だって似合う色ではない。座った椅子のキャスターを転がした。

「頼んで悪かったが、そんなに見つめられると捗らないな…」

苦笑交じりにそう言われてはっとした。見慣れすぎた背中は何時も遙か遠くにあることが通常で、今は目と鼻の先にある。

熱視線を送るには些か近すぎる距離だった。

「恰好良い小野寺先生をくまなく見てやろうと」
「なんだ?先生の恰好良さにとうとう葉瀬も気づいてしまったか。うんうん。着眼点は悪くないよ」

カラっとした笑い声と共に織り交ぜられるユーモア。
男女隔てなく人気があるのは、ただただ歳が近いだけではない。

「恰好良い小野寺先生まだですか?」
「今、恰好良く採点してるから」
「なんですかーそれ」

背もたれを前にして座った椅子は、誰にも使われていないのか、はたまたこうして偶然にも捕まえて手伝いをさせる生徒の為か。

地面を蹴ってぐるりと一周、二周。

強めに蹴って足を放す。ぐるりと回る遠心力に任せると、日差しが差し込む窓辺に背を向けた。
< 37 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop