彼女は僕を「君」と呼ぶ
式を終え、流れる人波に乗って体育館を後にすると、波から外れた所で彼女は居た。
ピンと張った膝、相変わらず歩く為ではなく、如何に背伸びに適しているかという風なローファー、チャンスとばかりに彼女の後ろに回った。
今なら気づかれずにその目線の先を見れるかもしれない。
彼女の真後ろに立ち、同じ様にちょいと背伸びをした。
視線は彼女の頭を越え、僅かなズレはあるものの先を辿る。
数人の生徒が往来して視界を掠めていくが、彼女のその直線上に居たのは間違いなく、英語科教諭の小野寺悠生(オノデラ ユウセイ)だった。
あぁ、小野寺教諭狙いか。
維の背伸びした踵は直ぐに地面に落ちる。
誰に対しても分け隔てなく、嫌味の無い気さくないい先生だ。中には、小野寺に対して疑似恋愛をする者もいるくらい。
だからか、その他大勢の女子と同じであった彼女にがっかりしてしまった。なんとも勝手な話だが。
もっと別のものを見ていると思った。何も遮る物もないのにその背伸びした先は、維の知らない世界さえ広がっている様な、そんな気さえしていたのだ。
もう彼女の事を追い掛ける理由もない。
寝て待てば正月がやって来て、新年を迎えたが、激変的に変わった事が何もない。例年通り。
そうしている間に、少しずつ彼女への興味が薄らいだまま新学期へと移った。
名前は彼女の友人が呼んでいるのを聞いたくらい。何処で背伸びをしていても前程には気にも止めなかった。
が、探し物をしている時には見つからず、やめた途端に見つかる。よくある話。
珍しく携帯を握ったまま寝坊してしまい、時刻を見れば既に一限目が始まっている。
今から急いで行っても授業の3分の2は終了しているだろう。
もういい。二限目からにしよう。
普段は真面目に授業に出席をしている。たまにの事、煩くなんて言われないだろう。
都合のいい事だけを考え、緩やかに自転車を漕いだ。一時間も遅ければ見慣れた街並みもどこか違って見える。
こういうのもいいかもしれない。ぼんやりとそんな事を思いながら駐輪場へ入るとタイミングよく一限目が終了するチャイムが鳴った。
ピンと張った膝、相変わらず歩く為ではなく、如何に背伸びに適しているかという風なローファー、チャンスとばかりに彼女の後ろに回った。
今なら気づかれずにその目線の先を見れるかもしれない。
彼女の真後ろに立ち、同じ様にちょいと背伸びをした。
視線は彼女の頭を越え、僅かなズレはあるものの先を辿る。
数人の生徒が往来して視界を掠めていくが、彼女のその直線上に居たのは間違いなく、英語科教諭の小野寺悠生(オノデラ ユウセイ)だった。
あぁ、小野寺教諭狙いか。
維の背伸びした踵は直ぐに地面に落ちる。
誰に対しても分け隔てなく、嫌味の無い気さくないい先生だ。中には、小野寺に対して疑似恋愛をする者もいるくらい。
だからか、その他大勢の女子と同じであった彼女にがっかりしてしまった。なんとも勝手な話だが。
もっと別のものを見ていると思った。何も遮る物もないのにその背伸びした先は、維の知らない世界さえ広がっている様な、そんな気さえしていたのだ。
もう彼女の事を追い掛ける理由もない。
寝て待てば正月がやって来て、新年を迎えたが、激変的に変わった事が何もない。例年通り。
そうしている間に、少しずつ彼女への興味が薄らいだまま新学期へと移った。
名前は彼女の友人が呼んでいるのを聞いたくらい。何処で背伸びをしていても前程には気にも止めなかった。
が、探し物をしている時には見つからず、やめた途端に見つかる。よくある話。
珍しく携帯を握ったまま寝坊してしまい、時刻を見れば既に一限目が始まっている。
今から急いで行っても授業の3分の2は終了しているだろう。
もういい。二限目からにしよう。
普段は真面目に授業に出席をしている。たまにの事、煩くなんて言われないだろう。
都合のいい事だけを考え、緩やかに自転車を漕いだ。一時間も遅ければ見慣れた街並みもどこか違って見える。
こういうのもいいかもしれない。ぼんやりとそんな事を思いながら駐輪場へ入るとタイミングよく一限目が終了するチャイムが鳴った。