彼女は僕を「君」と呼ぶ
「協力してあげるね」とでもいえば友情が芽生えるだろうか、口を開きかけてやめた。
「好きって言ったの」
「答えはまだだけど」そう恥ずかし気に言った彼女の横顔に無性に胸の中がざわついた。
先日の彼の様子が違ったのはこれか?
思わず棗は口を一文字に引き締め、唇に手を当てた。そうでなくては何か言ってしまいそうな気がしたから。
これは違うと、誰かに言い訳さえもしたくなったから。
どうしたのだろうか。