彼女は僕を「君」と呼ぶ
「おめでとうってまだ言ってたなかったら言ったの」

顔を上げない彼女はそう言った。

「そうなんだ」
「上手く笑えてたかな、君が居たら聞けたんだけど」
「見てたよ」
「…怒ってたんじゃないの?」
「それは満島さんの方でしょ?俺は嫌な事言った」
「正論よ」
「俺こそだよ。ちゃんと言ってきた…まぁ俺の報告なんていらないだろうけど」

維もしゃがみ込んで、軽く流そうとした。何時もの事だからと。
しかし、今日は違った。

「振ってあげたの?」
「どうして振る前提なの?」

顔を上げた彼女がそう言ったから。
小首をかしげてたっぷりと時間だけをとった。
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