彼女は僕を「君」と呼ぶ
「私の方がずっと好きだった」
「うん」
「好きなのを知って困ってる顔が好き。笑うと目が無くなるところも」
「うん、おれもあの笑顔は好きかも」
「もう随分呼ばれてないけど、なつめって呼ぶ声も」
「先生の声、あったかいよね」
「…ずっとそこにいたの、ずっと、でも私はいつまでも妹だ」

その足はしゃがみ込む事はなかった。
繋いでいた手を指へと変える。絡めて漸く彼女の体温を知る。

「私馬鹿みたいじゃない?」
「そんな事ない、恋なんてそんなものでしょ」
「嘘」
「本当。でも、信用できないならおれもしようか」
「何を」
「馬鹿な事。満島さんはずっとそのまま背伸びしててよ」

これからもきっと、小野寺教諭が好きな君を好きでいる。
好きと言えない君に伝える事は躊躇われるから、その代わりに今度はおれも背伸びをしよう。
君の瞳に映れるように。


◆◇end
< 62 / 62 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop