彼女は僕を「君」と呼ぶ
そして、その地面に着いてしまった踵の意味を知ってしまった気がした。

何時も小野寺教諭を見る時は背伸びをする。瞬きさえも忘れて目一杯に取り込もうと。

その分、疑似恋愛をしている女の子達とは遙かに違い、それはまるで大人との距離を詰めるか、はたまた届かぬ想いの距離だとさえ思えた。

「おれはそのすり減った分、満島さんの想いだとさえ感じますよ」

近くに来れば意外と長かった睫毛に涙の雫が跳ねて、こちらを見やった。

流石にその眼差しに胸が跳ねる。

見定める様にぱしぱしと瞼を瞬かせば、彼女は左腕の袖で荒く涙を拭い。右手は維の腕を掴んだまま歩き出した。
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