そんな結婚、あるワケないじゃん!
ストン…と2人で腰かける。

羽田に握られてる指先が、緊張してるせいかスゴく冷たい。
カタカタ…と肩が震えてるような気がするのも、きっと錯覚からだろう。


(…それとも、まさか本当に震えてる……?)


「あのなー、そんなに構えられるとやりにくいんだけど……」


顔を覗き込みながら羽田が言う。

そう言われても困るって。

私には全てが初体験なんだから。



「俺が居酒屋で初めて美結に付き合おうって言ったの覚えてるか?上司との恋愛はワケありになるのかなぁ…と、美結が疑問を抱いてたのがキッカケだったよな…」


世間話から始める羽田の顔を見つめる。
揃ってるまつげの先を見ながら、「そうだったね…」と相槌を打った。


「俺、あの時言わなかったけど、上司と恋愛してもワケありになんか必ずしもならねーと思うんだ。ワケがあるってことは、そこに秘密があるってことだろ?秘密っていうのは相手が誰でも持てるもんじゃね?…例えば、同僚でも部下でも。友人でも家族でも」


「こ…恋人同士でも……?」


聞き返す言葉に頷く。
その眼差しを見つめ返しながら、ふと思いついたことを口にした。


「じゃあ…リカさんに冷たくしてたのにはワケがあるの?」


私の声に反応して羽田の目が見開く。
しまった!…と思ってももう遅い。
羽田はパックリと口を開け、信じられない様な顔つきで聞き返した。

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