そんな結婚、あるワケないじゃん!
「別れを切り出した時……あいつスゴくホッとしたような顔してやがった。こっちの気持ちなんてまるで知らなくて、これで向こうの男に本気になれるっていう様な顔つきしてた……」


私から視線を外し、膝の上で掌を組んでる羽田を見つめた。


リカさんが羽田に思いを残した別れじゃなかった。

羽田の方が、リカさんに思いを残した別れだったんだ……。



「そ…そうなのかな……」


何と言っていいか分からんからそう呟いた。

リカさんの話から、そうであることは聞いて知っている。


だけど、何だか羽田の気持ちを考えると、素直に認めたくない気もしてーーー。



「そうなんだよ。それを証拠にイキイキしてただろ。初めて会った時」


あのモール内でショッピングしてた時のことを持ち出された。
数年ぶりに再会した時、表情がまるで違うリカさんに、羽田はスゴく驚いた…と言った。


「あんなにキレイだったかな…って、ちょっと目ぇ疑った。あんなに元気な声で俺に話しかけてきたことなんてなかった。だから面喰らって思わず背中までガン見してさ……」


その自分を眺める私の視線が怖くてカートを押してやると言ったらしい。



「…なんだ。やっぱり気まぐれか…」


思いやりでも何でもない。
羽田の気まずさが生んだ、ただの思いつきの行動だったんだ。



「やっぱり羽田は冷たい人なんだね…」


ボソッと囁いた言葉に振り向かれた。
ドキン…と胸の鳴るほど鋭い視線にギクッと背中が緊張する。



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