そんな結婚、あるワケないじゃん!
(ヤバいヤバい。こんなにドキドキしてるのはきっと私だけだ……)


悟られまいと必死になりつつ、ペットボトルのお茶をドアポケットに入れてドアを閉めようとしたら………



「ひっ!」


声と共に心臓が跳ね上がった。
ドアを掴んでた羽田の手に自分の指が重なったせいだ。


「何だよ、その叫び声」


呆れるように言われドギマギする。手が触れただけで狼狽えるなんて、あの車でのデート以来のことだ。


「は、羽田がまだいるとは思わなかったから……」


口から出まかせを吐きながらドアを閉める。
ビニール袋の中に残ってるのは、さっき買ったばかりのお泊り道具一式。



「…それは?」


頼むから指差して聞かないで!
私にも都合ってもんがあるんだってば!


「これはあの…メイク落としとかシャンプーとか……」


まさか下着まで入ってるとは言えない。
キュッと口を握りしめながら、さり気なく後ろへ隠した。


「ふぅん…」


平然とした顔つきで離れていく。
その後ろ姿にホッとしながら息を吐くと、羽田が思い出したように振り向いた。


「…お前、先に風呂入れば?俺、今日はやめとくから」


「えっ⁉︎ な、なんで…⁉︎」


「まだ熱っぽいし明日の朝入る。のぼせねー程度にゆっくり浸かってこいよ」


表情を確かめながらニヤつかれた。
緊張を知ってるかのようなその態度に、少しムッときてしまった。



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