そんな結婚、あるワケないじゃん!
「美結……」


「ひゃっ…!」


急に声をかけられて驚く。
洗い物の途中で声をかけてきた羽田は、私の背後から顔を覗かせた。


「お前、皿割るなよ。数少ねーんだから」

「う、うん…」


ドキドキと胸が鳴る。

羽田が近くにいるからじゃない。
さっきの美人のことを考えてた自分が後ろめたいからだ。


「風呂上がったら晩酌しよう。ツマミあったろ?」


お前が買ってきてたヤツ…と冷蔵庫を開ける。
その羽田の背中が遠い気がして、トン…と額をぶつけた。


「何…?」


振り向いた羽田に聞かれる。
何…と言われても言いように困る。

あの美人のことが頭から離れないとは、羽田には言えない……。


「何でもない……。ちょっと疲れただけ……」


熱も何もない。
ただちょっと鼻水が出るくらい。
体もダルくないし、気分だっていい。


でも、何だろ。
この気持ちの悪さはーーーー



「私………もう寝ていい?何だか体がキツいから……」


ごめん、羽田。
せっかくの初日なのに、こんな自分で。

でも、今は一緒にお酒飲む気分じゃないの。
飲んだら勢いに任せて聞いてしまいそうなの。



「あの女の人は誰?昔の知り合いっていうのは、元カノってこと……?」



考えたくないことを思い浮かべてしまった。
私がさっきから気を重くしてたのは、きっとそのせいだ。

あの美人と羽田の関係が気になったのも、きっとそうなんじゃないかな…と思ったせい。


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