アタシ、好きって言った?
IN THE END
最近ナツに逢っていない。
笑っていないナツを最後に見てから2週間、
携帯はナツを呼んでくれない。

ナツのことばかり考えていた。
ギャンブルも繁華街も、ナツに出逢ってからは意味を持たなくなった。

CDを手に取る。
ナツが教えてくれたバンド。
「ナツね、このバンド超スキなの!絶対有名になるから!」
自信ありげにナツは言っていた。
日本語訳がついていない為、必死に訳した。
「もう終わったんだ。」
「この恋はもう終わったんだ。」
ボーカルの掠れた声が甘く切なく歌っている。
ホコリまみれのターンテーブルを綺麗にし、バンドの音にスクラッチを重ねる。
指先に伝わるレコードの感触がたくみを思い出させた。
スクラッチの旋律がたくみからナツへと想いを動かす。

携帯が鳴った。
ナツだった!

「シン君お久!」
元気な声。
「うん。」
「ナツね!今、昼間も働いてるんだ!」
「えっ!そうなんだ!何してるの?」
「携帯のお店!今度お店来てよ!シン君の携帯変えてあげるから!」
前に進んでいたナツが嬉しくてたまらなかった。
僕も前に進もう。
「ナツ。バイク直したら逢いに行くよ!必ず直して逢いに行くから!」
電話の向こうでナツは笑った。
「うん。待ってるね!」
身体中に何かが溢れた。
止まっていた時間が動きだした。

その時間がたくみがいなくなってからの時間なのか、ナツの笑い顔が見れなかったあの日からなのかは分からないけど、とにかく針が動いたんだ。

掠れた切ない甘い声が聞こえてくる。
「君を思っているよ。」
「君が初めて笑った日。君が初めて泣いた日」
「全て僕は覚えている。」
「僕には永遠の愛だから」

CDを止めて僕はガレージへ向かった。
< 6 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop