香りに誘われて
何言ってんのこの居眠り男。

「私・・・1こ前の駅で降りたかったんですよね・・・」

イライラをぶつけるように言った。

「送っていくよ」

「あなた寝てましたよね」

男は少しばつの悪そうな顔で

「正確に言えば寝たふりかな?」

寝たふり?えええ?

もう軽いパニックだ。なんで寝たふりするの?

ってか少しかっこいいからって何をしてもいいの?

信じられない!

ちょっとばかしイケメンだからって何をやってもいいわけじゃない。

一歩間違えたら犯罪だよ!

一秒たりともここにいたくない。

タクシーひろってかえろう。これ以上関わるのは危険だ。

黙ってその場から立ち去ろうとした。

すると

「好きだったんだ・・ずっと・・・」

「はあ?」

何なの?いきなり告白?

なんでそういう展開になるのか全く分からなかった。

大体私はこの男の顔も初めて見たし、名前も、何をやっているのかも

知らないんだよ。

それなのに何で私が好きだって言えるのか全く理解できなかった。

「私はあなたなんか知らないわ」

「俺は知ってるよ。桜木奏楽さん・・・」
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop