strange
ズキン…

頭が痛い。

「沙良?ちゃんと持ってないと落ちるよ」

慧が私の手をお腹に引き寄せる。


ズキン ズキン…

頭が痛い。


「慧…慧……」


視界が歪む。

自転車の急ブレーキ。

慧の声が遠くなる。

目の前に広がる白いモヤ。

記憶を隠す白いモヤの向こう側にもう少しで届きそうなのに……

私が失くしたものはただの記憶だけなのかな。

見えない…眩しい…


「沙良…沙良!おい!沙良…」

声が近づいてくる。

慧が私を呼んでいるのだとわかる頃には意識がしっかりしてきて、目をそっと開けた。



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