strange
「慧、自転車…」

自分の顔が青ざめてるのがわかる。


「大丈夫だよ、このぐらい。すぐ直る。歩ける?」

慧の優しい顔。

色素の薄い髪の毛が、風に揺れている。

慧の白い腕に少しのすり傷ができてる。
慧の白い首筋が赤くなっている。


慧は昔から落ち着いていて、大人びていて、飄々としていた。

その慧をこんなにも焦らせる私のこの現象。

「もう大丈夫」

私は笑顔で慧を見る。


慧に映る私が笑顔でなくちゃ、慧は笑えないだろうから…


「自転車、変な音するね…」

うまく回らない車輪の音が私と慧の沈黙を埋める。


「沙良のせい」

プイッとする慧に後ろから飛びついた。


「やめろよ!あぶねぇだろ」

私は笑う。
大袈裟なぐらいに。

私に傷がないのは慧が守ってくれたから。




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