あまつぶひとしずく
あまつぶひとしずく
ぽつぽつ
放課後の学校の軒下。
ひとり立ち竦み、雨がアスファルトを叩く様子をぼんやりと眺める。
空から落ちた雫は簡単に色を変えて。
傘を持っていないせいで、その中に飛び出すことはできずにいた。
その時、
「傘、入れよ」
そう言って、康太が声をかける。
赤い顔を隠すように、透きとおるような水色の傘を傾けた。
「え、でも、それは……」
震えた、戸惑いを含んだ声を出す。
そっと彼を見上げるようにすれば、目があう。
────まるで、世界にふたりきりのよう。
「俺は、お前を濡らしたくないんだよ」
「どうして?」
息を吸って、そっと吐き出して、そして彼は、
「……好きだから」
そう、ささやく。
「ずっと、静音のことが好きだった」
「っ、」
「俺と付き合って下さい」
不器用でまっすぐな彼の瞳に射抜かれる。
「……はいっ」
────そんな、花がほころぶように、一瞬の永遠をあたしは、下駄箱の陰から見ていた。
康太と静音が、あたしの大切な人たちが付き合う瞬間を、見ていた。
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