あまつぶひとしずく




「智沙」



口を挟むことなく、ただゼリーを頬張っていた康太が、あたしの名前を呼ぶ。

あわあわと揺れていた手の動きをぴたりととめて、救いを求めるように彼を見やる。



「お前さ、そのまんまの自分にもうちょい自信持っていいよ」

「……」

「なんたって俺の親友だからなー!
いいやつだよ、智沙は」

「っ、」



まぶしい。

康太のにっと笑ったその顔が、目を細めてしまうほど、目の奥がにじむほど。



優しくて、……優しくて、誰よりも残酷な言葉を吐き出す唇が憎い。



『親友だから』



あたしね、その言葉、なにより欲しくて、いらないものだったんだよ。



だけどそんなこと言えるはずもないから。

涙を呑みこみ、ふたりともありがとう、とあたしは目を細めた。



そして、静音をなだめて、慰めて。

あたしの分のゼリーを食べようと思えば、康太に奪われていた。

そのことであたしたちは言い争い、静音がまた作ってくると約束してくれたり。

いつもと同じ、騒がしいあたしたちで。



あたしのことを想って泣いてくれる人がいる。

優しい言葉をかけてくれる人がいる。

あたしはとても恵まれているのに。



それなのに、こんなにも苦しい。



静音への友情、康太への友情……愛情。

色々なものと板挟みになり、あたしは自分という存在が煩わしかった。



苦しいと思うことが、苦しかった。





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