あまつぶひとしずく
ぽろぽろ
同じ制服を着た生徒がひとりもいない中、ゆっくりと通学路を進む。
ときたま駅に向かう通行人はいるけど、いつもの朝ほどの人じゃない。
雨が降る中。
無駄に急いで足元の水が跳ねないように、あたしはそっと歩いていた。
割と静かな学校に着いて、傘を閉じる。
康太に貸した傘が返ってこなかったから、いまだにあたしはビニール傘を使っている。
その先からあまつぶがぽろぽろと転がり落ちた。
そのままばっと水をはらうと、鳴り響くチャイム。
タイミングよく1限目の授業が終わったらしい。
校舎全体がざわめくのを感じて、あたしは自分の教室へ向かった。
開けっぱなしになっていた扉をくぐると、あー! とあたしを指差し、康太が大きな声を出す。
「やっときたな、寝坊女!」
「うるさい!」
康太の隣でおはよう、と呑気に笑う静音に同じように返す。
「なんであんたがこっちの教室にいんのよ」
あたしと静音は去年と引き続き同じクラスで、1組。
そして康太は隣の2組なはずなのに、どうしてあたしの教室にいるんだ。