あまつぶひとしずく




あたしと康太と静音と。

いつもそばにいて、仲のいい3人。

とても居心地のいい関係だ。



そんなあたしたちのうちのふたりが交際している今。

この関係を崩さないためには、大切な時間を失わないためには、恋愛感情は混ぜてはいけない。



大好きなふたりのそばにいるために、ふたりを傷つけないために、なにより必要ないことだから。

あたしのこの気持ちは、いらない。



それでもどうすることもできず抱えたまま。

捨てられないのなら、隠さないといけない。



隠しごとなんてしたことがなかったふたりに、言えないことができてしまった。

そのことが悲しいと思う。



でもこればっかりはどうしようもないんだ。



「明日は雨、降るのかな……」



雨は憂鬱になるけど、あたしの心を覆い隠してくれる。

だから、降ればいいのに。



だけど……明後日ならいいから。

明日はまだ、どうか降らないで欲しい。



あたしはあの傘を使いたくないから。

今日の夜空よりずっと鮮やかで、だけど深い抜け出せない恋のような、紺色のあの傘を。



もったいなくて、切なくて。

使えばますます……康太を好きになってしまいそうで。






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