あまつぶひとしずく
短く吐き出す。
二酸化炭素がのどを通るのが、とても重い。
彼女は察している。
あたしの想いに、気づいてしまったんだ。
「康太くんがちーちゃんに傘をあげた時。
ちーちゃんの反応を見て、今まで考えたこともなかったのに、好きなのかなって思ったの」
「……」
「わたし、ちーちゃんのことちっとも考えてなかったよね。ごめんね」
静音が悲しそうに、苦しそうに、笑う。
眉を寄せて、それでもあたしを責めない。
授業が始まるチャイムが鳴り響き、肩が跳ねる。
だけどあたしも静音も階段のそばから移動しない。
……できないんだ。
「ちーちゃんが康太くんのこと好きなら、それならもう康太くんとは付き合えないと思うの」
「え……?」
「わたし、康太くんとは、」
「静音!」
さっきとは真逆。
自分の声とは思えないほど厳しく鋭い声で、彼女の言葉を遮った。
「違うよ」
片手で荷物を抱え直し、静音の手にそっと触れる。
「さっきも言ったように、康太のことは好きだけど、違う」
あたしが隣にいるのは、違うんだ。
静音が隣にいないなんて、そんなのおかしいし、受け入れられるはずがない。