あまつぶひとしずく
「それが正解だよ。
中学から同じだったのに、今さら好きになんてなるわけない」
きっぱりと言い切ったあたしの答えに静音がようやくほっと体から力を抜く。
ふにゃりと崩れてしまいそうになったところを支えた。
「ごめんね、ちーちゃんのこと疑うようなこと言って……」
「大丈夫。あたしこそ、変な態度のせいで心配させちゃったね」
「誤解だったってわかったから、いいの」
静音が少し恥ずかしそうにしながら、首を横に振った。
優しい表情に、自然を装ったあたしの乾いた笑みが剥がれ落ちそうになる。
「ふたりが付き合うようになって嬉しいよ。
本当だよ」
康太に少しずつ惹かれていく静音を見守ってきた。
恋をしてから戸惑ったり、焦ったり、赤面したりする康太をからかいつつも応援してきた。
誰よりふたりに近い距離にいて、想いを受け止めて、結びつけた。
大好きなふたりが幸せで、あたしも……幸せなんだよ。
「ずっと言えてなかったけど、ね……」
胸の奥から絞り出す。
確かにあたしの感情だと確認するように、胸に手を当てる。
「おめでとう」
「え?」
「康太と付き合えることになったこと、……おめでとう」