あまつぶひとしずく
きらきら
静音と話をしてから3日が過ぎた放課後。
久しぶりに雨がやみ、水たまりや葉の上の雫が光を受けてきらきらと輝いている。
そんな中、腕に傘を引っかけたあたしの隣を歩くのは康太ただひとり。
静音から今日は月に1度の家庭科部内会議だから先に帰って欲しいと言われたんだ。
だから、ふたりきり。
ふたりが付き合う前はたびたび恋の相談として時間を共にしていただけに、とても久しく感じる。
「あーあ、静音がいない帰り道とかつまんね」
「うるさいな。
それなら学校戻って待っていればいいのに。
忠犬のように。忠犬のように!」
「忠犬言うな、彼氏だよ」
ずきりと重く痛む胸には、気づかないふりをする。
誤魔化すように康太に言葉を投げつけたのに、
「うそうそ、智沙といるの、楽しいよ」
なんて、こいつは簡単にあたしの心を緩めてしまう。
なんて、なんてずるいんだろう。
ご機嫌とりだっていうのに、康太の言葉がうそでないと知っているから、あたしは勢いを失う。
「うん……あたしも。康太といると楽しい」
そりゃよかった、とか気軽に返してくる。
その横顔さえもたまらなく好きで、愛おしくて、苦しい。
康太のそばにいると、なにより楽しいけど、苦しいんだ。