あまつぶひとしずく
「なー、智沙ー」
「なにー」
「あのさー、……ありがとなー」
「はい?」
突然の言葉に首を傾げる。
顔をのぞこうとすると、背けられて視線は合わない。
「静音とのこと、協力してくれてたし」
そのことか、と息が詰まった。
同時にわずかに顔が歪む。
だって、それは、同じ。
『ずっと応援してくれて、康太くんと付き合うきっかけをくれて、ありがとう』
数日前に静音があたしに向けた言葉と、同じだ。
どこまでもふたりは似ている。
あたしに対してまっすぐで、優しい。
悲しいくらいに愛おしい人たちだ。
「そんなの、改まって言わなくてよかったのに……」
言わないでいてくれたら、こんなに誇らしくて切ない気持ち、知らないままでいられたのに。
そう考えて、思わず唇を噛み締める。
「これでもずっと言おうと思って、気にしてたんだよ!
だから……あれだよ。言えてよかった」
そんなふうにぶっきらぼうに言って、康太は笑った。
眩しいほどにきらきらと、あたしに笑顔を向けた。
それがあたしの心に突き刺さり、崩れていきそうになる。