あまつぶひとしずく
あたしたちの好きの形は違う。
同じだったのに、変わってしまった。
康太が口にした〝好き〟はあたしのものとは別の〝好き〟だ。
だけど、それでもいい。
……いいんだ。
それでも、あたしは好きだと言えただけで。
好きだと言ってもらえただけで、幸せだと思うから。
だから、康太は静音を好きで。
静音も康太を好きで。
そんなふたりのそばにいるあたしの本当の想いは……伝わらないままで。
そしていつか、あたしは前に進む。
康太じゃなくて、誰か他の人に恋をするんだ。
「静音を泣かせたら許さないから!
そんなことがあったら、あんたとなんて別れさせてやるー!」
恐ろしいことを言うな! と怒る康太の声を受けた。
せいぜい頑張るがいいと笑って、あたしは彼に背を向け駆け出す。
傘を握り締めるあたしを追うように、声が届いた。
「また明日なー」
「っ、」
詰まらせた息を、ゆっくりと吐き出した。
あたしは、傘を振り回して応える。
「うん、また明日ー」
水たまりを避けることなく、踏みつける。
綺麗じゃないはずなのに透明な雫が、ぱしゃんと音を立てて跳ねた。