あまつぶひとしずく

ぱらぱら





わずかに歪み、滲む空。

雨雲に覆われた暗い色合いのそれを、ビニール傘越しに見上げた。



ぱらぱらと音を立てて、空が揺れる。



パーマを当てたこげ茶の髪は、いつものようにオールバックのポニーテールにしているけど、湿気を含んでいる気がする。

ローファーだけでなく、膝上丈の青チェックの巻きスカートも濡れているし、雨なんて嫌いだ。



朝から通学路に、憂鬱な気持ちを吐き出すようにため息をこぼした時。



「ちーちゃん、おはよう」

「はよー、智沙!」



そう言ってあたしの隣に並んだのは、



「おはよう」



静音と康太。

あたしの落ちこんだ気分の原因のふたりだ。



なのにそんなこと少しも勘づくことなく、康太は黒い傘をあたしのものにぶつけてくる。

笑い声とともに水飛沫が宙を舞った。



「智沙ー、テンション低いぞー」

「うるっさい、傘ぶつけてこないでよ。
ただでさえあたしはスカート濡れてうんざりしてんだから」

「お前、そのスカート丈で濡らすとか、傘さすの下手くそかよ」

「はあ?」



苛立った声を出すも、へへっと顔をくしゃくしゃにして楽しそうにしている康太には敵わない。

思わず力が抜けた。






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